2013年4月5日金曜日

読書感想文

前職の元同僚より頂いた。いつもありがとうございます。

シトラス。
最初は表紙のめんこい女の子が主人公なのかな…と思ったら群像劇でした。誰が主人公?といわれたら志保さんだとは思うけれど。割とややこしくて、全体で二回、部分部分三回以上読んだ。
一番真っ直ぐな志保さんが最後の一歩を踏み出せず、他のメイン三人は志保さんのおかげで最後の一歩を踏み出せるというのがなんとも。これが背中を押す役割を持ったキャラの宿命なのか…
と思ったけれど、崇くんに限ってはそうでもないのか。本人に見えないところとはいえ志保さんのことフォローしたりしてるし、奈七美さんとのやりとりはあるけれど、半分くらいは自力。それどころか最後の一歩踏み出した後で、更に一歩引いてるんだよな好きな人のために…こんなイケメンが少女漫画なのに誰ともくっつかないって、崇くんも可哀相だな…
奈七美さんと蒼馬くんの二人は完全に志保さんのおかげ。蒼馬くんは単なるめんどくさシャイボーイなだけで悪意はないけど、一話除けば志保さんに割と酷いことばかりしちゃってる。奈七美さんに至っては明らかに悪意あったし釈明の余地なしみたいな状態、その上最後までありがとうの一言もなし…二人の向かう先が明るいとも限らないんだけれど。まあこの二人は他二人に比べて面倒な過去があるので仕方ないかも。奈七美さんのデレは崇くんへの一回だけか…攻略難易度高すぎるだろう…
うん、まとめてみると志保さん可哀相だなこれ…前向き元気っ子だから作品としては最終的に救われた雰囲気になってるけど…とはいえ幼馴染の崇くんとくっつけちゃうのはありきたりすぎて興ざめだし、青春難しいですね。

ひたいに三日月。
ニンジャの話。少女漫画にニンジャナンデ!?アイエエエ!!!ぶっちゃけヒロイン相当のゆたかさんよりヒーロー相当のニンジャ梓くんのほうがかわいいのですが、どうしてこうなった…あと三話で完全にヒロイン空気なんだけどいいのかこれ。最後まで完全に勢いだけだったなあ。とはいえその勢いのおかげで面白かった気がする。
オニの話。オチの割りにそこまでが長すぎて退屈だったかなあ…オチもなあ。イマイチ。
サンタの話。オチが即読めるんだけれど、構成がちゃんとしてるので、オチばればれでもきちんと最後まで面白く読めた。最後のコマはリボンしといて欲しかったかなあ…リボンどこから出したんだよという謎があるけど。あとこれトナカイって書いてますけど犬ですよね…アッハイトナカイです。多分一番面白かった。

外天楼。
エロ本をめぐるギャグミステリから始まり、メタフィクションもしくはメタメタフィクション、叙述トリックロボ SF、ミステリネタギャグ…から気がついたら人工生命やらなにやら入り混じって最後は全て謎のまま誰も救われずに静かに終わる。
二話は一見すると不要な感じがするけれど、三話との対比でみると、人間を殺したことに罪悪感を感じない人間と、製作者の意図通りではなかったとはいえ、ロボットを破壊したことに罪悪感を感じるロボット、という対比になっていて面白い…けれど、狙ったのか狙ってないのか。
というか割と長期間の連載なので当然だけれど、全体としてみると綿密に構築されたミステリというわけではない。序盤に張られている伏線はキリエくらい。とはいえこれはロボットとかクローンということにできたので、割となんとでもつかえる。一方時間経過のほうは謎で、物語最後に 26 歳のアリオは 11 年前まで一話の三人でつるんでいた…つまり 15 歳までつるんでいたことになるわけだけれど、そうするとキリエの姿が変わらないのはヤバイはずで…というかそもそも一話の三人の年齢関係なくキリエが外ぶらついてるのはヤバイ気がする…けどまあその辺はいいか。
最後の最後まで、アリオがどうしたいのか分からなかった。失敗作のフェアリーをどう処分したのかは完全に謎だけれどここは無視する。アリオ自身が、自分やキリエの情報を処分しようとしているのに、同じことをしようとした鬼口に対して怒りを覚えているのがまず良く分からない。既に証拠は燃やし終えているように見えるのに、冴子さんに「まだすることがある」とか言ってたけれど、その辺が関係するのかな?でも一体、何をしたかったのか。ここも謎。
そもそも冴子さんの推理では鬼口がしたことになっているけれど、これの真相もはっきりしていない。ダイイングメッセージの「シート」はフェイクだったわけだけれど、フェイクなのはいいとして、脅迫状来てるのに無視してたのかよ鬼口、という違和感もある。これ鬼口じゃないと仮定すると、消去法でキリエぐらいしかいないんだよなあ。そしてそれは割りと納得がいく…キリエの行動は作中で描かれてる部分に関しても、アリオのため、というのが一貫している。アリオをどう見ていたのかは分からないけれど、少なくとも大切に思っていたようには描写されている。冴子さんを殺すことはなかったと思うんだけれど。
色々考えてみても結局アリオは何をどう思ってどうしたかったのか分からない…というのはまあ、アリオにも分かってない、人間だから感情的に、衝動で動いてますよ、ということなんだろうか…実際アリオは鬼口を殺すときに自分たちの存在について思い悩んでいたわけだし、最初の殺人だって完全に衝動的なものだったのだから。しかしそれでも、どういう感情だったかすら分からないんだよなあ…まあそれだってアリオにも分かんないよと言われそう。
最終的に物語の中心になるアリオの心情が全く謎なので、作品としてのメッセージ性とかも謎になっている。その上で、関係者は全身死んで、真相は闇に葬られ(多分)…別にそういうのが書きたいわけじゃなくて、エロも SF もミステリも道具でしかなかったのかもしれない。じゃあ何が書きたかったのだろうか。うーん、謎。
ところで最後のアリオとキリエの逃避行はイリヤ思い出した。全然似てないけれど。まあ最後に行き場のない逃避行でおしまい、はよくあるか。
と考えると、作者的には書きたいものがあったわけではなくって、メフィストという雑誌で連載するにあたって、よくある題材を組み合わせて、メフィストに載せられるくらいのものを描きましたよ、好きなように読んでください、ということなのかもしれないなあ。メタ読みすぎて嫌だけれど。しかし、あとがきもないんだよなあ。真面目にミステリないしメッセージ性のある SF として読むには色々と足りない。
まあ面白かったけれど、考えれば考えるほどしっくりこないなあ、と思ったのだった。
あとぼちぼちパロとかオマージュあったけど、半分も気づいてないんだろうなあ。四話のトリック絶対元ネタあると思うんだけど。

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