2013年8月18日日曜日

夏休みの宿題

といえば読書感想文なのです。古事記にもそう書いてあるってよ。宿題に追われる月末なんて格好悪いので、ちゃっちゃと片付けてしまいましょう。
完全にネタバレどころか独自解釈も含まれていると思うし、多分かなり長くなると思うので、余程暇な人以外は読まなくていいです。


著者:慎結 作品名:星降り坂一丁目三番地

百合姫より六編の読みきり短編と、書下ろしが一編収録されている短編集。漫画です。
全てについて記述するには余白…は兎も角、ボクの体力が足りないので一つに絞る。
ジュリエット×2 という短編がある。舞台は中高一貫の女子高、中等部三年の主人公まなみは、窓から見える高等部の、名前も知らない先輩に憧れている。自分にはないものを全部持った、理想の先輩として。
作品は卒業式、バレンタイン前の二月から始まる。卒業式で歌う合唱の練習にも身が入らず、窓から先輩を眺めながら歌うまなみ。仕舞いにはクラスメイトに「まなみはそこで歌え!」と云われ、窓をあけ、憧れの先輩へ声を届けんと歌い続ける。その歌声が届いたのか、先輩は「ハナマル」を描いたプリントをまなみへ…
作品紹介はこんなものか。この短編の面白い箇所として一番分かりやすいのは、自分の恋心にまなみさんが気づきかけるところからの一連のシーン。憧れの先輩、エリさんは吃音症を患っており、クラスメイトに虐められている。バレンタインに高等部に忍び込んだまなみさんは、それを目撃してしまう。虐めの描写には一切の手加減が無い、眼鏡を踏まれ、まなみさんが机の中に忍び込ませたチョコレートは、クラスメイトに見つけられ床に落とされる。挙句、それを食べろといわれ、エリさんは口に…おお、神よ、いつまで寝ているのですか!まなみさん視点で話が進むこともあって、このシーンまでは明るい話のように初見では見えるため、落差からくるショックは実際大きい、よね…多分。
GL と呼ばれるような作品に限らず、恋愛物で恋心に気づくタイミングの描写というのは重要なわけですが、なかなか見ない容赦のない斬りつけ方だと思う。少なくともまんがタイムなんとか系にはないだろう(なにそれ)。ここで、まなみさんの抱いていた憧れの先輩象は無茶苦茶にされてしまう。その上で、まなみさんは何を感じがどう動くか、が物語の主題…のはず。
これだけだと「何だよレズだったの」とか云われて、虐められている所を目撃してしまい…みたいなのはいくらでもありそうなので、なんだありきたりじゃないかと思われそうですが、他にもあって…寧ろ、個人的にはそちらが特に気に入っている。
所々に散りばめられた複線、というよりは二回目に読む人にしか分からないような…作者の作風を知っていれば、もしかすればマグガフィンとなるかもしれないような描写の数々。まあ、なんかそういうのだよ、わかってくださいよ。
これらは主に、まなみさんとエリさんのメールのやりとりに潜んでいる。吃音であるということは最後まで明かしてはいけない重要な事実(オチ)なので、最後まで肉声でのやり取りが無いこと自体が、必然の産物とはいえ複線と取れなくも無い…うーん、無理筋かこれは。
兎も角、例をあげると、エリさんからまなみさんへのメール『"好きなのは空、嫌いなことを忘れられるから"』これは、虐めに対する複線であると取れる。まなみさんから、高等部って楽しい?と聞かれた時の返信『"楽しいよ(^^)だいじょうぶ!"』こちらは、まなみさんが高等部での学園生活に不安を抱いているという描写が先にされており、初見ではそれに対する回答であるかのように見えるが、矢張り虐めを暗に示唆している。『"うん将来カウンセラーになりたいの" "だからがんばってる" "悩んでる人の力になりたいから"』吃音症を患っていることのへの複線と取れる。
なんだよどれも救いが無いな!と思うかも知れませんが、それだけではないのが更に面白いところ。特に前述の『"好きなのは空、嫌いなことを忘れられるから"』というメールは、その後高等部のエリさんのクラスに忍び込んだまなみさんが、まなみさんのクラスを見るシーンにより、見え方が全く変わってくる。エリさんがまなみさんを見ていただろう教室の窓には、空が映っている。当然そこには、普段まなみさんがいるのだ。メール中の空が実のところ何を指しているかなんてことは、野暮なので書かない(ほとんど書いてるよ!)。
作中でもまなみさんが疑問に思うシーンがありますが、そもそもエリさんは、何故自分のメールアドレスをまなみさんに伝えたのか…これも野暮ですね。
23 ページという、決して多くは無いページ数に、特に文字数にして数百文字程度であろうメールのやりとりに、これでもかと詰め込まれた複線、暗示、回答が、二度三度と読み返し理解出来た時のカタルシスが実際ワザマエなのです。一方で、正直一回さらっと読んだ程度ではこれは分からないだろうという話でもあります。コンテンツの供給量が多い現代に繰り返し作品を鑑賞することを前提とした構成というのは、なかなか難しいと思うのですが、本当によく描いてくれたと思います。
ちなみに、憧れの先輩が虐められているところを目撃してしまったまなみさんが、どういう行動に出るのかは…続きは書籍で!


著者:百合原明 作品名:ベツキス

休刊となってしまったつぼみと、その後つぼみ Web で掲載されていた漫画作品です。掲載誌が休刊になってしまったために、かなり風呂敷の畳み方が強引な感じではあるのですが、それでもなかなかに面白いです。
吸血鬼と人間の物語、もっというと非人間と人間の物語というのはまあ何か最早古典すぎてテンプレ状態ですからその辺はスルー。ちなみにどちらかがどちらかになるという話ではなく最後まで吸血鬼は吸血鬼、人間は人間として物語は進みます。そんなわけで当然人間は吸血鬼ほど長くは生きられないというネタが用いられるわけですがこれもテンプレなので多分スルー。というか作品説明も面倒なのでスルー。しんどいんですよ、分かってくださいよ。
ちなみにこの作品の吸血鬼は血を吸う代わりに他者の体液を摂取することでもいいという設定で、食事と称してキスしまくります。「合理的ちゅー」と著者の百合原先生はいわれてますが、あざと…すばらしい設定ですね!
さて、望永さんという吸血鬼さんが登場します。実際美少女です。人間だった頃シスターだった望永さんは、ある日吸血鬼となってしまいます。何故吸血鬼になってしまったのかは分からないまま終わってしまうのですが、そういうこと気にしてたらハゲると思います。教会では忌まわしい存在として閉じ込められていた望永さんは、ある日自分の事を同胞と呼ぶ存在(群れて人間を襲う吸血鬼の集団だと思うのですが、その辺は明確に作品内では描写されていないのでまあよく分かりません)に助け出されます。が、まあ禄でもない集団だったのでしょう、望永さんは命からがらといった体で逃げ出し、とある女性に救われます。以下この女性を「彼女」と呼びます。
「彼女」とその家族に支えられながら、望永さんが「自分は人間に生かされているのだ」と思うようになる回想シーンがあるのですが、今回はこの回想シーン、もっと言うと望永さんと「彼女」の関係にフォーカスして、ほとんど独自解釈の、感想というよりは分析をこれから記述したいと思います。なんていうか、気持ち悪いですね。
望永さんが「彼女」に対し恋愛感情を抱いていたのは、本人がひかりさん(表紙に一切出てきませんが主人公ポジションの女の子です!)に「恋をしたから」といっていること、「彼女」に似た、「彼女」の孫娘であるまだ幼い輪さんを見たときの呆けたような表情、その後のぐっと何かをこらえるような表情、その他輪さんへの描写から(こっちは倒錯的なのが多いですが)確定だと思うのですが、問題は望永さんが「彼女」に対して、その感情を伝えたのかという点で…
さらりと読んでいる分には、望永さんと「彼女」は相思相愛に見えるわけですが、真面目に読むとそう単純な話でもなく…二人(とその家族)の回想シーン中、最後を除けば、望永さんはほとんど無表情です。また最後の最後まで「彼女」の名を呼ぶことなく、「彼女」のことを『貴方』と呼んでいます。回想の中で唯一、望永さんがその感情を吐露しているのは「彼女」の亡くなるシーン『ありがとう……愛麗』『愛してる』の二コマ、二つの台詞だけです。これらの言葉のどこまでが「彼女」に届いたのかどうか、という点が問題になります。
途中、実の娘に強引に上京されてしまった「彼女」は『貴方はずっと私の娘でいてくれるわよね』と望永さんに問いかけます(懇願したという方が適切かもしれません)。望永さんは『…………ええ』『私はいつまでも貴方の娘』と逡巡の後に返答します。「彼女」は人間ですから、当然人間の時間の中で生きており、望永さんに注がれた愛がどのようなものだったのか等というのは、少ない描写からは読み取れず、そりゃ時々だろうとしか答えようがなく、最期のやり取りも、どのようにも取れるよう描かれています。一方で望永さんは、愛する「彼女」の願いである『娘でいること』を最期まで守り続けたのではないか、つまり、自分の恋愛感情を「彼女」に対して秘したままでいたのではないかと読めます。『愛してる』という言葉は恐らく、彼女が息を引き取った後に言ったのでしょう。回想シーンのあとのひかりさんに対する台詞(最早一人語りで自分に言い聞かせているかのようにも見えますが)『私は』『最期まで彼女の娘だった』『それで良かった 幸せだったもの』がその根拠です。
ようは、望永さんは愛する「彼女」のために、自分の気持ちを秘したまま「彼女」の娘であり続けた…というと、愛する人のために自分の気持ちを秘したままでいるなんてまあテンプレじゃないか、ということになってしまいますが、このあと「彼女」に似た「彼女」の孫娘である輪さんとの出会いがあり、いつかまた別れの時がやってくることを知りながらも、秘め続けてきた想いが倒錯的に出ちゃってて…愛した人にはその気持ちを伝えられず、その人にそっくりな孫娘に倒錯的な感情を抱いてしまう美少女、かわいいですね、ということが云いたかっただけです。結論の割りに長すぎる!ドン引きですね。ほとんど独自解釈だし。
えー、兎に角望永さんはかわいいということが伝わればいいです。
ところで回想シーン周りは、時系列がどうやってもなんかうまくはまらないんですが…そういうの気にしてるとハゲると思うのでまあいいんじゃないでしょうか。
望永さんが好きすぎてなんかもう文章滅茶苦茶ですね…まあいいか。


小学生並みの感想って多分こういうのをいうんだと思う。

2013年8月14日水曜日

りりかるゴロー、ラーメンを食べるの巻

デス小岩に「味源 伝統」という大変気になるラーメン屋さんができていたので、いってきたのだ。

味源というと、社会人一年目の頃に、週に一度は神田店に通っていたお店で、大変に思い入れのあるラーメン屋さん。ところがこっちは「伝統」なんて postfix がついている。ノレンわけか、インスパイア系か、なんであれ兎に角気になるので入ってみた次第で…

注文したのは勿論味噌オロチョン。神田店の味噌オロチョンは、まず野菜をいためるところから始めるのだけれど、注文してから一向に野菜を炒める音が聞こえてこない。これはちょっと…と思っていると、存外早くラーメンが出てきた。麺の上には刻んだだけのネギとわかめ。これは違うなあ、と食べる前から残念な気持ちになった。

スープを麺に絡めて一口、まず辛くない。これについては辛さの指定ができるというのを見落としていた自分の落ち度もあるけれど、辛さの指定ができるというのはスープに何かしらの辛いものを適当な量突っ込むだけで作ってますよということであり、その、なんだ。これ以上はいうまい。辛さだけではなく、野菜の甘みもない。ベースの味噌も、なんともいいようのない普通の味噌味。味噌オロチョンというと、味噌の味はするのにしっかり辛く、それでいて何故か甘くまろやかという、謎物体のはずなのだけれども…そして麺、これも神田店とは違った。それ以上は別段感想もない。視力が悪くてよく見えなかったけれど、そもそも積んである麺が入ってるっぽいダンボールからして違っていたので、麺が違うというのは食べる前から分かっていたことではある。というか神田店は確かダンボールではなく木箱…野菜は前述のとおりで、もやしも炒められておらず、たまねぎなど入ってすらいなかった。メンマは普通。最後にチャーシュー。ボクがチャーシュー好きでないというのもあると思うけれど、はっきりいってまずかった。見た目にもまずそうだった。業務用の普通にチャーシューかなあ。
そういえば、半ライスがサービスでついてきたのだけれど、若干冷めていた。嫌がらせか。

神田店の味噌オロチョンが 950 円なのに対して、デス小岩の味源 伝統の味噌オロチョンは 850 円。量にしても味にしても、大した期待はしていなかったのだけれど、神田店と比べるまでもなく残念な気持ちになる程度のラーメンだった。これなら、少し歩いたところにある次郎クローンインスパイア(次郎クローンではない、次郎クローンもあるので注意したい)のほうが、安くて量も多くておいしい。とはいえ、味噌ラーメンのお店は貴重なのだけれど…

恐らく二度と行くことはないだろう。おいしければ味源との関係とかを店員さんに聞こうかとも思っていたのだけれど、そんなわけがなかったのだ。

おいしくなかったということを書き綴って疲れるなんて馬鹿げていると思いながら、筆を置く。しかし少し疲れているのはタイピングしたからというだけではないと思う…こう、気持ちがね…悲しいじゃないですか…